ノズルレスモータ

2013-10-31

防衛技術シンポジウムのポスターセッションで聞いたダクテッドロケットの話が面白かったのでメモ。

空対空ミサイルの射程を伸ばす、または会合時の速度を上げるには、戦闘機の巡航高度でやみくもに水平に加速するよりも、まずは空気の影響が少なくなる高さまで上昇させてから落下させた方が有利だったりしますが、推進薬を増やせば更に有利です。ただ戦闘機に搭載する都合上、サイズには自ずと制限が生まれます。

そこで考え出されたのが、固体ロケットモータの酸化剤を減らす代わりに燃料を増やしたガスジェネレータが生み出す不完全燃焼なガスと、ダクトから取り入れた圧縮空気を混合させて完全燃焼させる「ダクテッドロケット」と固体ロケットモータを組み合わせて、まず完全燃焼に必要な圧縮空気が得られる速度まで固体ロケットモータで加速し、固体ロケットモータ燃焼終了後に出来た空間をダクテッドロケットの燃焼室に使ってしまえ……というアイデアなのですが、ここで問題になるのが固体ロケットモータのノズルです。

固体ロケットモータとダクテッドロケットではノズル形状が全く異なるので、前者のノズルは使用後に投棄してしまうのが一番手っ取り早いのですが、その投棄されたノズルが(ミサイルを発射した)戦闘機に衝突する可能性はゼロではありません。では固体ロケットモータの推進薬にノズルを組み込んでしまってはどうでしょう?内面燃焼であれば内孔の延長状にノズル形状を設けることは不可能ではありません。ただ、燃焼が進めば当然内孔は広がりノズル開口比が変化してしまいます。出来る限り最後まで一定の推力を保つにはどうすれば良いでしょう?

ノズル側で対処出来ないのであれば、燃焼ガスの圧力を徐々に高めていけば良いのです。具体的にはバインダ(推進薬を構成する各成分をまとめると同時にそれ自体も燃料となるゴム)中の酸化剤、酸化鉄等の燃焼触媒の配合を連続的に変化させることで、燃焼が進むにつれて燃焼速度が徐々に上がるような推進薬を実現すれば良いのです。

このようなノズルレスモータとダクテッドロケットの組み合わせは既に実用化されていて、たとえばMBDAのミーティア空対空ミサイルがあります。今回のポスターセッションは、バインダにボロンを用いて高エネルギー化したガスジェネレータを作って燃焼試験を行った結果、従来のガスジェネレータよりも長射程化・高速化出来そうだ……という発表でしたが、個人的にはノズルレスモータの仕組みに大変興味を覚えました。上手いこと考えるなぁ。